平成生まれの寿司職人、森敏也が大切にしていること。
人生で本当に大切な「あいうえお」
〜寿司職人として生きる僕の信念〜
僕は寿司屋の倅(せがれ)として
この世に生まれ、
物心ついた頃には、
父の背中――寿司職人という
生き様に憧れていました。
高校を卒業してすぐに、寿司の道へ。
新宿、日本橋、大宮と、10年半。
決して楽じゃなかった修行時代を経て、
「故郷へ錦を」の想いを胸に、
実家の寿司屋へと戻りました。
でも――
現実は甘くなかった。
価値観の違い、譲れない想い。
父との衝突を繰り返し、
ついには袂を分かつことに。
それでも、
寿司職人としての人生を全うしたい。
そう強く願った僕は、
足立区・五反野の地で独立し、
「すし処とし」を開業しました。
そんな僕が、
今心の拠り所にしている言葉があります。
それが――
人生で大切な「あいうえお」
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あ「愛」するから愛される
寿司も、人も。
“愛”を込めて向き合ったぶんだけ、
ちゃんと返ってくる。
自分の仕事を、自分の握る一貫を、
何よりもまず自分が愛せるか。
そこが職人としての原点だと思っています。
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い「命」はあるだけありがたい
どれだけ忙しくても、しんどくても、
今日も仕込みができて、
握りができる――それだけでありがたい。
寿司を通じて人を喜ばせられる命に、
感謝しかありません。
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う「運」は人が運ぶもの
寿司屋は技術だけじゃなく“人との縁”が命。
修行時代の出会いも、常連さんとのご縁も、
すべて「人が運んできてくれた運」だと
思っています。
だからこそ、
僕も誰かの運になれるような人でいたい。
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え「縁」は人生を豊かにする
五反野という場所に店を構え、
最初は一見さんだった方々が、
気づけば「家族のような常連さん」に。
一つひとつの縁が、
僕の人生を本当に豊かにしてくれました。
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お「恩」は次の人に送るもの
僕自身、
多くの先輩方から恩をいただいてきました。
それを「恩返し」で終わらせず、
「恩送り」していく。
それが今後見習いを育てたいという
僕の役目でもあると感じています。
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この「あいうえお」は、
ただの語呂合わせじゃない。
僕にとっては、
人生そのものを支える“芯”みたいなものです。
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そして――
人生がうまくいかない時こそ
思い出したい「かきくけこ」
• か「感謝」が縁と運を引き寄せる
• き「機嫌」は自分でとれるもの
• く「苦難」の時こそ笑ってみよう
• け「経験」と思えば失敗はこわくない
• こ「言葉」を変えると人生が変わる
自分に起こる出来事の「意味付け」は、
自分で選べる。
失敗だって、苦労だって、
誰かに届く物語に変わる。
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最後に。
寿司職人としての人生は、
決して平坦じゃなかった。
それでも僕は、今日も寿司を握ります。
“誰かの人生に、そっと寄り添える一貫”を
目指して。
だからこそ伝えたい。
「あいうえお」だけで、
人生は少し変えられる。
そう信じて、これからも前に進みます。