修業では教えてくれなかったこと。 ── 技術を磨くことと、お店を育てることは、まったく別の技術だった。

修業では教えてくれなかったこと。


 技術を磨くことと、
お店を育てることは、
まったく別の技術だった。




技術があれば、お店は繁盛すると思っていた。

独立する前の僕は、本気でそう思っていました。

「○○年も修業したんだから大丈夫。」

「料理には自信がある。」

「美味しいものを作れば、お客様は来てくれる。」

そう信じていました。

でも、現実は違いました。

技術があることと、
お店が繁盛することは、
まったく別の話でした。


修業時代に教わるのは、

包丁の握り方。

火入れ。

味付け。

盛り付け。

仕込み。

魚の目利き。

どれも大切です。

でも、誰も教えてくれなかったことがあります。

「選ばれる理由の作り方」です。



今は、美味しいお店がたくさんあります。

だから、
お客様は「美味しい」だけでは選びません。

誰が作っているのか。

どんな想いなのか。

どんな時間を過ごせるのか。

そういうものも含めて、お店を選んでいます。



僕も最初は、

料理だけを磨けばいいと思っていました。

でも今は、

料理を磨く時間と同じくらい、

人との繋がりを作る時間。

自分を知ってもらう時間。

街との関係を築く時間。

これらが大切だと感じています。



紹介は広告ではありません。

信用です。

一人のお客様。

一軒のお店。

一人の酒屋さん。

一人の友人。

その積み重ねが、

「いいお店知ってるよ。」

という一言になって返ってきます。



そして、
僕が一番勘違いしていたことがあります。

料理は、

来店理由にはなる。

でも、

再来店理由になるとは限らない。

また来たいと思う理由は、

料理だけではなく、

空気。

居心地。

会話。

人柄。

安心感。

そういう
目には見えないものの積み重ねでした。



今でも僕は勉強中です。

だから、
この考えが正解だとは思っていません。

でも一つだけ言えることがあります。

料理人は、料理を磨くことには慣れています。

でも、お店を育てることは、
料理とは別の技術でした。

だから今日も、

料理だけでなく、

人としても、お店としても、

少しずつ成長していきたいと思います。


「技術は修業で身につく。でも、人に選ばれる店は、お客様に育ててもらうものだ。」

とし